死体換金

死体換金 encashment of corpse

 死体換金 encashment of corpse とは死者の遺族が、死に関わった者に責任を追求し金銭を要求する行為全般を指す。これに法律専門家等が介入し、彼らの事業として成り立つ場合もありそれを「死体換金ビジネス」といい、いわゆるインターネットスラングとして知られている。

背景

 死亡には大きく分けて自然死・外因死である。自然死の代表である病死では他人を責める根拠はない。また外因死であっても自傷や自然災害では他人を責める根拠はほとんどない。死亡に他人を責める根拠があるのは、業務上過失、放火、殺人など加害者が存在する場合であるが全死亡数からすると少数である。

定義

 「死体の発生を根拠として」遺族が「関係者を」責め、裁判などを通じて「直接金銭を要求する」ことを「死体換金」と定義する。但し、明確に証明された犯罪加害者を責めるものはそもそも「損害賠償」という理にかなった行為であり定義に含めない。しかし,死体換金行為なのか損害賠償請求なのかの区別は曖昧であり,当事者らの主観により左右される。法的には「損害賠償」と「死体換金」の区別をすることはなく,いずれも損害賠償請求事件として裁判にかけられることになる。しかしながら、裁判の公平性・良識性があればほとんとの死体換金は達成されないといえよう。

各企業の対策

 人を危険にさらすおそれのある業種のほぼ全部が、会社単位で何らかの保険に加入しており、個人の自動車の運転手においても任意保険未加入者はごく少数である。死亡事故が業務上で起こった場合は法律家介入の元で、公序良俗に則する範囲で遺族に保険金等が支払われるシステムになっており、遺族が死亡事故を起こした者に直接金銭を要求する事象を最大限忌避しているようである。保険掛け金を払うことで損害賠償や死体換金対策をするのである。
 一方保険未加入者の作為により死亡した場合、遺族は希望額面通りの金銭を回収することは実質困難となることもある。金銭を回収できないかった遺族は別のルートで損失補填を考えるかもしれない。

 死を直接扱う病院がその標的にされ易い。というのは現在日本人の約80%が病院内で死亡することが示すように、大部分の死を取り扱い死者やその遺族に関わるのは病院だからである。従って上記の定義上、「関係者」のほとんどは病院となっているであろう。勿論、病院という一企業も個人および団体で保険に加入しているものの、他企業と比較し負担が大きいといえよう。

病院では

 病院にかかった理由が何であれ病院で死亡すれば、遺族に死体換金の契機があるのである。簡単に言えば「病院で死んだら医療過誤」という単純な理屈である。生前の健康意識・人間性・教養・資産等の状況に関わらず人命の額は一定以上の高額に査定されがちである。日本の医療体制上は病院へのフリーアクセスが許されており、中には大金を得る機会を狙っている欲深き者もいよう。何らかの因縁をつけ金銭を得ようとしていることは想像に難くない。地域性にもよるが死体換金行為を受けることが多い病院ほど、対応に追われ廃れていくのである。

病院で死んだら医療過誤か?

 外因性の致死的障害の場合、病院はあくまでその治療に当たる関係者に過ぎない。しかし、遺族の曲解によっては病院が治療を怠った当事者にされる場合もある。病死についても同様で病院は治療に当たる関係者に過ぎず、病院内に死を招いた当事者は本人のみである。強いていえば死を招いた当事者は本人・家族くらいなものであろう。しかし、アルコール依存症や糖尿病などそれが死者の日常生活の乱れによるものであっても、治療に当たれば病院は遺族よりその当事者とみなされ,病院が損害賠償請求事件のその被告になりうるのである。それが死体換金行為の一つの例である。

法律家の介入

 昨今、病死した者の遺族が病気を責めず病院を責める傾向にあるという。重症な病人を治療するには重症度に比例して合併症(治療関連死)が多くなる傾向があるが、合併症を医療過誤だと主張して病院を責める。また老衰状態にある老人が病院で転倒や誤嚥して死亡した場合であっても遺族は病院を責める。
 しかし真の医療過誤による死亡はごく稀で、大部分が「病死」ないしは本人の「自傷」である。そのため当然ながら医療過誤訴訟の原告勝訴率は他の訴訟と比較し著しく低い。
 それでも裁判所が「弱者救済」と銘打った恣意的な原告勝訴判決を下すこともしばしばであり、それは被告側病院には不安要素となる。また、脅しに屈した病院が裁判にかけることなく賠償金や見舞金を遺族に払い「死体換金所」として甘んじてしまうことがあり、公立病院に多い傾向にある。(eg 福島県立大野病院事件)
 日本においては、「死体換金」行為は低所得層がビッグマネーを手にする手段として蔓延している。それは医療現場を萎縮させる非道な行為であるものの、現状では法的規制等はなく病院自らが防衛するほかはない。

架空の医療過誤

 人の死というものを理解しない遺族が病院を執拗に責め立てることがある。そういった遺族の病院へのつきまとい・誹謗中傷行為をやめさせるのは非常に困難である。話し合いの場を設け病院側の理を説明するしかないが、かえって攻撃のエネルギーが増大しかねない。病院が業務に支障が出ることも多い。裁判所に遺族に対する面会禁止処分等を要請すればよいが時間がかかる。一般的には示談金を支払う手法も考えられるが、現在どの病院も財政難である。病院も保険に加入しておりその保険金を以って示談金に充てることもあるが、保険会社は病院側に明らかな過誤がなければ保険金支払いを拒否するもので裁判を勧めることが多い。全国的にはいわゆる医療過誤裁判は保険会社からの勧め、すなわち遺族側から出された示談を撥ねつけ遺族側の訴訟を誘発することによって起こっている。

 しかし被告台に立ちたくないなど、架空の医療過誤を創作し保険金を受け取ろうとする病院が存在する。しかしながらその方法には問題がある。仮に示談金を支払ったとしても遺族は裁判を起こすことができるため、その裁判費用に充てられても不思議ではない。従って、病院は安易な示談は行うべきではなく、架空の医療過誤の創作は論外であるといえよう。架空の医療過誤の報告書が刑事事件に発展したのは記憶に新しい。(福島県立大野病院事件)

  • 最終更新:2015-05-20 15:13:40

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